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2022年2月13日 (日)

清の37年の思い

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「あきちゃびよ〜」から「ちむがなさん」

「あきちゃびよ〜!」。37年前の1985年春、当時まだ髪がフサフサだった頃の私が、ザトウクジラと初めて出会った時に叫んだ第一声である。島言葉で「凄い!」という意味で、その時の感動は今も忘れられない。その大きさと迫力に一瞬で虜になった。

それから毎日のように、小舟でカメラを片手に、海の恋人に会うような気持ちで出かけていった。私はクジラに恋をしたのだ。もっと近くで見たい、迫力のある写真を撮りたい、クジラが好きで好きでたまらない。冬になるとそわそわワクワクし、朝から夕方までクジラを追いかけ、写真集を出版するほどのめりこんだ。

慶良間海域がザトウクジラの重要な繁殖海域だということが分かり、1991年に座間味村ホエールウォッチング協会が設立され、観光業としてのホエールウォッチングが本格化した。『クジラに優しいホエールウォッチング』を理念に掲げ、鯨の行動を妨げず、繁殖海域の保護、母クジラが安心して子育てができる環境保全を目指した自主ルールが作られた。

当然、私も中心メンバーとなって協会を立ち上げ、自主ルールの重要性もよく理解していた。ところが、いざ海に出てクジラを見つけると、興奮して理性がふっ飛び、お客さんに近くでクジラを見せたい、カメラで撮らせてあげたい、自分自身ももっと迫力のある写真を撮りたいという欲望が頭をもたげてくるのだ。たびたび展望台や仲間のウォッチング船に注意され、喧嘩になることもあった。反省もした。逆に注意することもあった。大好きなクジラに対する保護と欲望の狭間でいつも葛藤の毎日だった。

そんな中、ザトウクジラの個体識別(ID)調査が始まり、クジラに愛称をつけるようになった。尾ビレにZ模様のある『ゼット』は、もう30年前からの常連だ。暴れん坊のオスで、メイティングポッドで暴れまくるが恋はなかなか成就しない。『んぼーちゃん』はデージマギー(とても大きい)オス。大迫力のブリーチやテールスラップを見せてくれる。毎年の再会が楽しみになった。しかし、姿を見せなくなったクジラもいる。「来年も座間味に帰ってきてくれるよう」、自ずとクジラに接する気持ちが優しくなった。それは、他の船長達も一緒だった。みんなが自主ルールを守り、無理に近づかなくなった。急旋回や急加速をせず、長年の経験と勘でクジラの行動を読み、穏やかな操船をするようになった。すると、あきちゃびよ〜、逆にクジラの方から寄ってくる「たっくわり」が増えたのだ。

「たっくわり」は島言葉で「くっつく」の意味で、今や、ブリーチよりも大興奮する座間味のホエールウォッチングの特色だ。クジラとの信頼関係が築けたことで、船が一定の距離を保って停止したり穏やかな操船をすると、クジラの方から寄ってくるのだ。特にフレンドリーなのが、メスの『たっちゃん』。船の真下で顔を下にしてピタッと寄り添ってきたり、スパイホップして水面から顔を出して船上の人を見る。同じくメスの『ゴロ〜ちゃん』は船の周りでお腹を上にして水面でゴロゴロする。メイティング中のメスがオスから逃げるように船にベタベタ寄ってくることもある。船を同じ仲間のように思ってもらえたようで、最高にうれしくなる。人もクジラも平和で楽しいひとときだ。「たっくわり」は、すったもんだしながらも30年以上、座間味のみんなで一丸となって地道に守り抜いてきた「クジラにやさしいウォッチング」の賜物だと、誇りに思っている。未来に残したい光景だ。

しかし、10年ほど前から近隣の他の海域でホエールウォッチングが急激に増え、ホエールスイムが行われるようになるにつれ、「たっくわり」やスパイホップなどの行動がだんだんと減少し、クジラの行動が複雑化して、予測不可能な行動や船を避けるような行動も見られるようになった。座間味のクジラにやさしい自主ルールの適用海域10マイル(16km)以内においても、その問題が今、押し寄せてきている。

そんな心配の最中、1月30日に行われたJWDC日本クジライルカウォッチング協議会シンポジウムの基調講演で、写真家でジャーナリストの水口博也氏は、「世界の多くの論文が科学的根拠を持って、ホエールスイムはクジラの生態や環境に大きく影響があると訴えている」と明言された。論文によると、「船や人が近づいてクジラが行動を変えれば、嫌がっている。船から人が水に入った時90%近くクジラが行動を変えた」「親子クジラの授乳や休息時間が減り、繁殖率に影響」「繁殖海域で母クジラはほとんど食べることなく授乳を続けるため、エネルギーを節約して休息時間もたっぷり取りたいが、船や遊泳者の接近によって、不用意に泳いだり、スピードアップしたり、必要以上に潜らなければならない影響が非常に懸念される」とのこと。「そこに愛があるのであれば、スイムはやめませんか」と。

また、SNSでクジラに接近した迫力のある写真や動画をアップする事で、周りの人に「もっと迫力のある写真や映像を撮らそうと思わせてしまう魔物になる」「クジラを愛するという本来の行為から相当に歪んだ姿」だとお話された。私自身チムアタイして(心にささる)、反省すべきこともいっぱいあり、いろいろと勉強になった。

今年も、座間味の海には、胸ビレの白い『ホワイトレディ』が子どもを連れて帰ってきた。この海を信じ、10年前から同じ場所で子育てをしている。慶良間海域は、ザトウクジラの聖地だ。この大好きなクジラたちの『ゆりかご』を未来へ守りたい。今、沖縄県内でもホエールスイムが問題になっているが、私たちは、もう一度原点に戻り、クジラたちがこの海に何をしに帰って来るのかを考えたい。クジラの未来を考えなければ、私たちの未来もない。WWにとってのSDGsとは?とるべき行動は?私たちに出来ることは何か?...。今でも、クジラに会う時は初恋のデートのように心踊る。だが、私の恋心は「ちむがなさん(愛する心)」に変わっている。私にも孫ができた。愛する孫のためにも、いつまでもこの海がクジラたちにとって安心して繁殖活動できる故郷の海であるよう、子や孫、次の世代にバトンタッチができるよう取り組みたい。

水口博也氏の基調講演の骨子をご一読されたい方は下記URLからご覧頂けます。
→http://jwdc2014.wix.com/jwdc
真の愛がある方は是非お読み下さい。

『そこに愛はあるんか〜!!!あ〜い〜が〜いち〜ばん〜♪キヨフル〜』

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